ホワイトノートブック -White Notebook-

徒然と日々のことを記録するおブログ

北海道の高速道路はこのまま片側1車線ばっかりで本当にいいのか?

注意

※個人的な推測、イメージ、偏見がふんだんに詰め込まれていますので、その辺ご了承ください。

※分かる範囲で資料を見ていますが、わからんところは予想です。

 (2020年度の道路交通センサスは2021年に延期になったので、古いデータしか参照できない)

 

こんにちは、Pooh.oです。

でっかいどう 北海道

北海道は非常に広いです。北海道道南の中心都市「函館市」から、北海道最北端の市「稚内市」までは一般国道(下道)のみだと560kmちょっとらしいです。

↑ 下道経由の状態でGoogle Mapsを埋め込むのどうやってやるんですか???

ちなみにこれは日本の道路の中心地「日本橋」から神戸市役所までの距離とほとんど変わらんらしいです。あれ?日本って意外と小さい?

じゃあこの広い北海道には、高規格幹線道路(以下、高速道路)が移動の上で必要不可欠なんですね!

......という話にはちょっとなりません。

いや、別にそんなことはないんです。必要なところは必要ですけど、いらないところは正直いらないかもしれないんです。

片側2車線の高速道路が少なすぎる

 

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北海道高速道路建設促進期成会 ホームページより引用

www.hokkaido.cci.or.jp

↑文字化けしてますが、ここが引用元。
これは北海道高速道路建設促進期成会のホームページから引用させていただいた、2020年3月末現在の北海道の高速道路の地図でございます。さて、皆さんはこの地図のどこまでが片側2車線以上の道路だと思うでしょうか?「土地なんて有り余っている北海道のことだから、全線じゃね?」と思う方、「NEXCOが管理している有料道路(青線)は全部片側2車線以上だろう。」と思う方。色々いらっしゃると思いますが、実は、

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上記図に筆者が注釈を入れたもの

はい。この赤線の中の高速道路だけです。具体的な区間で言うと、

いかがでしょうか皆さん。たったのこれだけです。

北海道内ですでに開通している高速道路は1,183km(2020年3月現在)。

片側2車線なのはそのうちの295km(24.9%)だけなのです。

少ないですね~。これ以外の888km(75.1%)は全て片側1車線です。

片側1車線の高速道路・高規格道路は、正直利用価値が無い。

北海道は典型的な車社会ですので、車による長距離移動の需要は当然あります。通常高速道路は、信号が無く、なおかつある程度の速度で快適に走行できる。というメリットがあります。

がしかし、片側1車線の高速道路・高規格道路では、この魅力は半減してしまいます。国土交通省が2016年から2019年まで年1回開いていた、「高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会」の2016年の第1回会議に資料を参考に、片側1車線高速道路の問題について整理してみます。

www.mlit.go.jp

ポイント①「制限速度」

北海道の片側2車線高速道路の制限速度のデフォルトは80km/h100km/hです。これは全国的に見てもよくある数字なのでは無いのでしょうか。がしかし、片側1車線の高速道路は基本的に制限速度は70km/hなんですね。

Washinoki-iseki tunnel.JPG
(Dai-chant) - (Dai-chant), パブリック・ドメイン, リンクによる


片側1車線の高速道路の特徴として

  1. 対面通行
  2. 真ん中にラバーポール(近年ワイヤーやしっかりとした中央分離帯も増えているが)

があります。真ん中にガードレールなどでできた中央分離帯が無いため、何かの拍子でハンドル操作を誤った場合、対向車線に入ってしまう恐れがあります。このため制限速度が高速道路としては遅めの70km/hなんですね。

ポイント②「抜かせない」

片側1車線道路ということは、まあ当然ながら中央分離帯側に追い越し車線は有りません。たまに現れる1km~2kmぐらいの追い越し車線で車を抜かすしか無いわけです。こうなると制限速度より遅めで走ってる車などがいた場合、ずっと抜かせない状態が続きます。

北海道の郊外の国道などでは、信号がない区間がずっと続く道路も多くあります。全く同じとはいきませんが、高速道路を走るのと一般国道を60km/hで走るのは殆ど変わらない場合も結構あるのです。それなのに高速道路を走るときは高い通行料が必要なわけで、これでは使う人もまばらなのではないのでしょうか。

また緊急車両にとっても、これは重大な問題です。北海道は大病院がある都市がかなり限られます。地域の中規模病院で対処できないような患者さんがいた場合、救急車で近くの大病院に搬送するという事例がかなりあります。そのような時に片側1車線の高速道路だと、どうでしょうか。救急車が他の車を追い越すことが難しいのです。

ポイント③「狭い」

Hobatsu Tunnel,Doto expwy.JPG
GOXZ7 - 自身で撮影, GFDL, リンクによる

これは私の体験談なのですが、片側1車線道路は運転していてかなり狭く感じます。これが40km/hほどの低速で走行するなら、また印象は変わるのでしょうが、70km/hで走るとなるとこれが結構怖いのです。

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H27 道路交通センサスより

さてここで登場、H27(2015)年の道路交通センサスです。

www.mlit.go.jp

これは道央道の片側1車線区間落部IC~八雲ICの情報です。少し見づらいのですが、昼間非混雑時旅行速度というところをご覧ください。上りは91.2km/h、下りは90.4km/hと書かれています。つまりこの区間の平均的な速度は90km/h超えということなのです。制限速度を20km/h以上も超過していますね。

片側1車線しか無く、中央分離帯はただのポール。対向車が突っ込んでくる可能性があり、なおかつその狭い道路を90km/h以上で走ったとしたら、皆さん結構なストレスを感じると思いませんか?

私はこの区間を大雨の夜に通った事があるのですが、70km/hで巡航中の私に、後ろからぶっ飛ばしてきた車に煽られに煽られたことが一度あります。しかもその車たちはいざ追い越し車線が出てきても、絶対に抜かすことはしません。基本速度超過などで警察のお世話になる時、その車列の先頭の車が捕まることが多いです。もし追い越し車線で抜かして自分が先頭になったら、捕まるのは自分になってしまうため、抜かさずに先頭を煽ることで車列の速度を上げようとしてくるのです。自車のスリップの恐怖、飛び出してくる動物の恐怖(その日は実際にキタキツネが路肩にいました。飛び出しては来なかったですけど)、後ろから追突されるんじゃないかと思うぐらいの圧力。あれはかなりのストレスでした。

その分、片側2車線の区間に出たあとはとても気が楽でした。自車を抜かしたい車はさっさと横から抜いていってくれるし、何かあったときは隣の車線に逃げれるという余裕があるからです。

お金ないのかもしれないけど、高速道路作る時は片側2車線にしてくれ

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国土交通省『高速道路の正面衝突事故防止対策に関する技術検討委員会』資料より

ちなみに2016年現在、日本にある高速道路のうちとりあえず片側1車線で開通させている(といっても数十年「とりあえず」は放置されるのだが)暫定2車線の道路は、4,112km(36.3%)らしいです。北海道(75.1%)と比べてかなり低い水準ですが、それでも国土交通省はかなり問題視しているようで、4車線化事業が進むことになっています。北海道では下記の区間が10年~15年を目処に4車線化されるとか。

このうち、以下の区間は既に事業が始まっているとのこと。

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国土交通省 道路局 高速道路課 2020年3月31日 プレスリリースより

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国土交通省 道路局 高速道路課 2019年3月29日 プレスリリースより

www.mlit.go.jp

↑ 2020年3月31日 プレスリリース

www.mlit.go.jp

↑ 2019年3月29日 プレスリリース

結局どこまで高速道路を伸ばすのか?

長々と片側1車線高速道路について書いてきましたが、ここからはもう一つの議題へ。

ここで改めて北海道高速道路建設促進期成会のあの図を見てみましょう。

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北海道高速道路建設促進期成会 ホームページより引用

少し見づらいので補足しますと、実線は既に開通している区間。点線は事業中または計画路線です。札幌JCTを中心に北海道の高速道路網は出来上がっているわけですが、ではこれからの未来、果たして高速道路をどこまで伸ばす気なのでしょうか?

そりゃ計画区間全ての開通を目指すのは当たり前でしょう。でもちょっと待ってください。本当にいるんですか?その高速道路。

片側1車線の高速道路の末端部をひたすら作るだけなら、それはどうなのかなと思います。

防災上の問題、地域交通の拡充(それが結果的にJR北海道を苦しめているのはなんとも皮肉なことですが)など色々理由があるでしょう。でも北海道は先に片側2車線化とミッシングリンク*1の解消に力を入れるべきだと思うのです。

その高速道路は何を目指しているのか?

北海道では俗に高速道路と呼ばれるものは、

  • NEXCOが管理する、有料の高規格道路が主にA路線。
  • A路線の補完であり、将来的にはA路線に含まれるが、現状は都市バイパスなどとして先行開通している無料の高規格道路が主にA'路線。
  • A路線とは全く関係のない、無料の高規格道路がB路線。

こんな感じに分かれています。

※北海道内の話であって、本州ではまた違う。

それぞれリストにしてみると、

こんな感じです。この中で私が問題にしたいのはB路線について。

というのもこの道路たちは全部末端区間を伸ばしていく道路なのです。

A路線やA'路線というのは、お互いに繋がることで、既存の高速道路網をさらに有用なものにしてくれます。ここでは「道央自動車道 士別剣淵IC~名寄バイパス 名寄IC」を取り上げてみましょう。

A路線とA'路線の場合

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北海道開発局 旭川開発建設部 ホームページより

www.hkd.mlit.go.jp

この道路は道央自動車道(A路線)の士別剣淵ICと名寄美深道路(A'路線)の名寄ICを結ぶ区間です。この区間ミッシングリンクの典型的な例であり、すぐ先に高規格道路があるにも関わらずなかなか道路が繋がらない区間でした。現在はこの区間が全て事業化されており、あと10年ほどで繋がるのかもしれません。

B路線の場合

がしかし、B路線が目指す先には既存の高速道路はありません。その地域で比較的大きい都市を目指しているのみです。ここでは日高自動車道を例に上げてみます。

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北海道開発局 室蘭開発建設部 ホームページより

www.hkd.mlit.go.jp

この道路は道央自動車道 苫小牧東ICから建設され、最終的に浦河町を目指している高速道路です。現在は苫小牧市浦河町の間にある大きめの街「新ひだか町」を目指して建設が進められています。新ひだか町から浦河町までの区間は未だ計画路線の段階です。さてこの高速道路の役目は主に2つあります。

一つは苫小牧東港を高速道路網に接続する」ということ。

そしてもう一つは「日高地方の地域交通を良くする」ということです。

1つ目の「苫小牧東港を高速道路網に接続する」という目標は、既に達成されました。残りは「日高地方の地域交通を良くする」なのですが、そこまで急ぐ問題なのでしょうか?確かに津波からの退避や、並行する一般国道(現道)が海岸沿いを通っているため、被災した際の代替道路としての役目はあるでしょう。しかし同時に今めちゃくちゃ力を入れて取り組むべき課題でも無いと感じるのです。

既存の片側1車線道路の改修にも防災的な役割はありますし、地域交通の便を良くするという効果もあります。しかしなぜか北海道では新規の高速道路が優先されています。なぜでしょうか?B路線の延長が悪いというわけでは有りません。それ以上に取り組む課題があるのでは?という思いなのです。

高速道路が「高速道路」として機能する北海道であってほしい

最初にも書きましたが、北海道は非常に広いです。

本当にこのままで良いのでしょうか?私は「とにかく新規の高速道路を作る」という、今の道路行政に待ったをかけるべきだと思います。道東自動車道などの通行量が多いのにも関わらず、片側1車線が続いている。そんな道路をまず集中的に片側2車線に整備することや、すぐそこに高規格道路があるのに、つながっていないミッシングリンクを繋げる努力をする。それの裏でゆっくりとB路線を建設する。こうでも良いのではないのでしょうか。

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北海道開発局 令和2年度 北海道開発局事業概要より
今後北海道の高速道路網はどうなるのでしょうか。

*1:道路が未開通区間などで途中で途切れており連続性がない場所